公開統計の横断分析により、小規模事務所の構造的危機を定量的に裏付け
AILEX合同会社(本社:東京都渋谷区、以下「AILEX」)は、2026年5月21日に全面施行される改正民事訴訟法に伴う民事裁判書類電子提出システム「mints」義務化について、公的資料・業界調査・報道記事・弁護士会資料を横断的に分析した包括的実態調査の結果を本日公表いたします。
https://ailex.co.jp
本調査では、弁護士の65.5%がmintsの実務経験ゼロであること、約36%がアカウント未登録であること、98.1%がFAXに依存していること等に加え、メタデータ削除義務や誤アップロードの回復困難性など現場レベルの運用リスクを網羅的に整理しました。
AILEXはこの状況を「2026年5月の崖」と位置づけ、制度の理想と現場の実態との間に存在する深刻なギャップに警鐘を鳴らします。
調査の背景
2026年5月21日、改正民事訴訟法が全面施行され、弁護士等の訴訟代理人はmintsによるオンライン申立てが法的義務となります(改正民事訴訟法第132条の11第1項1号)。紙での提出は方式違反として不適法となり、弁護士業務における最大級のデジタル転換が施行されます。施行まで約3か月となった現在、弁護士の準備状況に関する統一的な実態把握は十分に行われていませんでした。
AILEXは、最高裁判所・日弁連・法務省の公表資料、弁護士ドットコム「プロフェッショナルテック総研」2024年調査(n=316)、共同通信・日経新聞報道、各地弁護士会の会報・研修資料、裁判所公式FAQを横断的に収集・分析する公開統計横断分析を実施しました。
AILEX合同会社による調査結果
① 弁護士の3人に2人がmints未経験
弁護士ドットコムが2024年6〜7月に実施した調査によれば、mintsを「実際の裁判では使用したことがない」弁護士は65.5%にのぼります。5件以上使用した経験者は全体の8.9%にすぎません。
義務化まで約3か月を残す中、弁護士の約3人に2人が実務経験ゼロという事実は、施行後の混乱リスクを示す最も深刻な指標です。
② 約36%がアカウント未登録のまま
2025年10月の共同通信・日経新聞報道によれば、全弁護士約4万7,000人のうちmintsに登録済みなのは約3万人(約64%)で、約1万7,000人が未登録でした。
日弁連が2025年7月に一斉登録案内を発出し約2万人が駆け込み登録しましたが、それでも約36%が未対応です。
日弁連関係者は「書面では提出できなくなること自体、十分に浸透していない」と危機感を示しています。
③ FAX依存率98.1%、紙優先率57.6%
同調査では、「FAXは使っていない」と回答した弁護士はわずか1.9%でした。
紙のFAX利用が49.4%、複合機ペーパーレスが26.9%、ウェブFAXが11.4%、併用が10.4%であり、合計98.1%がFAXに依存しています。事件記録も「紙が多い」38.0%、「やや紙が多い」19.6%で、合計57.6%が紙を優先。
紙を好む理由は「一覧性が高い」(59.2%)、「文字が読みやすい」(45.9%)であり、単なる慣習ではなく実務上の合理的判断でもあります。
④ ウェブ会議は87.4%が高評価——IT化拒絶ではなく運用品質への不安
注目すべきは、弁護士はIT化そのものに反対していないという事実です。ウェブ会議導入について「良い」65.2%、「やや良い」22.2%、合計87.4%が高評価。民事裁判IT化全般にも約80%が賛成しています。
「e法廷」が支持される一方で「e提出(mints)」の利用率が低迷する理由は、両者が要求する業務フロー変容の性質の違いにあります。
ウェブ会議は移動時間削減という明確な便益があるのに対し、mintsは「紙を郵送する」プロセスを「PDFに変換してアップロードする」ITプロセスに変えるため、短期的な作業負担増が避けられません。
不満の本質は「IT化への拒絶」ではなく「運用品質への不安」です。
⑤ 操作負荷は紙の1.5倍
甲府地裁で先行利用した弁護士は、紙ベースの業務負担を1とした場合「何の準備もなくmintsを使うと負担は約1.5倍」と報告しています。
証拠の個別PDF化、ファイル名付与(50文字以内)、証拠番号の右上表記、容量50MB以内への調整が弁護士側に転嫁されるためです。
先行利用者からは「mintsだけで仕事をするのは無理」「データの受け渡し手段と割り切るべき」との声が上がっています。
⑥ 紙時代にはなかった6つの新リスク
義務化後に弁護士が直面する新たな運用リスクを本調査で体系的に整理しました。
メタデータ削除義務。 PDFに残存する作成者情報等を削除してからアップロードする必要があります。
誤アップロードの不可逆性。 当事者はアップロード済みファイルを自ら削除できず、相手方が印刷・ダウンロードしたかもシステム上把握できません。
宛先限定不可。 事件に関連付けられた全当事者と担当部職員が参照可能であり、紙提出時代の「裁判所限り」の感覚とは異なります。
パスワード付きPDFの衝突。 mintsはパスワード保護PDFを受け付けませんが、セキュリティ設定で自動付与している事務所では提出前に個別解除が必要です。
海外アクセス不可。 海外からのmintsアクセスは明示的に禁止されています。
事件終局後のデータ削除。 事件終了後はmints上のデータが削除されるため、事務所側での保存管理が不可欠です。
⑦ 補助者アカウント——改修されたが制約は残存
mintsの補助者アカウントは当初「1人の事務職員は1人の弁護士にしか紐付け不可」でしたが、2026年1月27日の改修で最大3アカウント・3弁護士に緩和されました。ただしアカウントごとに異なるメールアドレスが必要という不合理な仕様は維持されており、根本的な解決には至っていません。
⑧ TreeeS遅延と「試用期間ゼロ」の危機
最高裁が30億円超で開発していた次世代システム「TreeeS」は開発遅延により、改修mintsで施行に対応する方針に転換されました。有志弁護士グループ「Change! 日弁連」は「試用期間の決定的な欠如」を指摘し、最低1年の検証期間が必要と主張しています。
AILEXが提唱する「2026年5月の崖」
AILEXは本調査に基づき、5つの構造的リスクを「2026年5月の崖」と位置づけました。
経験の崖。 65.5%が実務未経験のまま義務化を迎えます。
習慣の崖。 FAX依存98%、紙優先57.6%からの一気の電子移行です。
支援の崖。 80%超の小規模事務所にIT支援体制と公的補助金がありません。
運用の崖。 メタデータ・誤送信・パスワード等の新リスクが一斉に顕在化します。
システムの崖。 暫定システムでの本番運用と将来のTreeeS再移行の二重負担です。
結論と提言
mints義務化は日本の民事裁判史における不可逆的な転換点です。日弁連・各弁護士会の研修も加速しており、「一度やってしまえば意外と大丈夫」という声も増えつつあります。しかし、mintsが単なるファイル受渡しツールにとどまる限り、業務効率は改善どころか悪化しかねません。
AILEXは、弁護士会による施行後の継続的研修の強化、小規模事務所への支援体制の構築、そしてmints周辺のワークフロー自動化ツールを含むエコシステム全体での業務最適化が義務化の成否を左右する鍵であると提言いたします。
調査概要
調査名称: mints義務化と弁護士の準備状況に関する包括的実態調査
調査主体: AILEX合同会社
調査方法: 公開統計横断分析(デスクリサーチ)
調査公表日: 2026年2月26日
詳細レポート: 全文は AILEX公式サイトにて公開予定(
https://ailex.co.jp)
※本調査は独自のアンケートを実施したものではなく、公的資料および既存調査データの横断分析です。弁護士ドットコム調査は同社会員を母集団とするため、全国の弁護士全体を統計的に代表するとは限りません。
【免責事項】 本プレスリリースは公開情報に基づく情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。個別の訴訟手続や事務所運営に関する判断については、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。
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